12月1日に金沢・とり野菜みそBLUECATS ARENAで行われたTリーグ、金沢ポート対木下マイスター東京戦。2番に出場した金沢の五十嵐史弥は、世界ランキング15位の林昀儒(チャイニーズタイペイ)に対し、4ゲーム目に5−10とマッチポイントを握られながら奇跡的な逆転勝利を収めた。
ビクトリーマッチにも出場し、大島祐哉を破ってチームの勝利を決めた五十嵐。確かな進化を証明するとともに、来年1月に迫った全日本選手権で上位進出を目指す五十嵐に話を聞いた。
−12月1日のTリーグ、木下マイスター東京戦での林昀儒(チャイニーズタイペイ)戦では、劇的な勝利を収めました。試合を振り返っていかがですか?
五十嵐史弥(以下・五十嵐):本当に奇跡だと思いますね。試合後に自分でも試合を見直したんですけど、自分でも「ここからどうやって勝ったの?」と思います。4ゲーム目に5−10でマッチポイントを取られましたし、ゲームカウント0-1の2ゲーム目も8-10で負けていた。
−1ゲーム目の入りはどうでしたか?
五十嵐:本当に緊張してしまって、実は前日の夜から、1本目のサービスは「フォアに逆横回転のロングサービスを出そう」と決めていたんですけど、それをミスしてしまって……。「やっぱり力入ってるな」と思いました。それで0−4になって、6−11で落としてしまった。林昀儒はバックの回転量が本当に凄くて、相手の得意な位置で戦われたら手がつけられないという感じでした。
ぼくは結構サービスの種類が多いんですけど、普段の試合ではあまり多く使わずに負けてしまうこともあったので、自分のサービスを全部出し切ろうと。最近はバックサービスも練習していて、2ゲーム目の途中からバックサービスを使うことで流れが良くなりましたね。バックサービスは回転というより、コースと低さに気をつけています。
−2ゲーム目を8−10からの逆転で取ることができましたが、3ゲーム目も3−11で落とし、4ゲーム目も中盤でリードを広げられて5−10になった。絶体絶命でしたが、どんなことを考えていたんでしょう?
五十嵐:試合の展開としては相手のラッキーポイントがかなり多くて、自分のプレーは決して悪くないと感じていました。5−10になった時は、追いつこうというより、1球1球挑戦というか、自分のやってきたことを出し切って、それで負けたらしかたないという気持ちでした。10−10に追いついて、ぼくのドライブがエッジで入ったので、最後はぼくにもちょっとツキが来た感じでした。
−最終ゲームは6−6からの短期決戦でした。
五十嵐:10−6で一気にマッチポイントを握ったんですけど、そこからトップレベルのプレーを見せつけられて、10−9まで追い上げられた。「このまま自分のベストを尽くすしかない」という感じで、バックより相手のフォアを攻めようと思っていました。とにかくベストを尽くそうと。
最後の1本は相手の3球目強打をミドルに止めて、次の1本を相手のフォアにパワードライブで決めた。盛り上がったし、気持ち良かったですね。ぼくは勝ってラケットを投げるのは好きじゃないんですけど、フロアに倒れ込んで、投げてはいないけど気づいたら手から離れていた。「あ、ラケットない!」と思って(笑)、それくらいうれしかったです。ラケットはすぐ拾いました(笑)。
−5番のビクトリーマッチにも起用され、大島(祐哉)選手に勝ってチームの勝利を決めました。
五十嵐:ビクトリーマッチは人生初でした。大島(祐哉)選手には前回の対戦では0−3で負けていた。その後に故障もしてしまって、また練習を再開してから、自分のプレースタイルを見直したんです。
−最後に、今後の目標を教えてください。
五十嵐:来年1月の全日本選手権で結果を残して、WTTに出たいですね。今年の春からずっと掲げていた目標なので、それを達成したいです。全日本での最高成績はベスト32なので、まずランクに入りたい。
Tリーグではお客さんに満足してもらって、帰ってもらいたいというのが一番ですね。勝ちにいくのは当たり前なんですけど、プロ選手として、会場に足を運んでくださったお客さんにはお金や時間以上の価値を感じてほしいとずっと思っています。今回、林昀儒選手に勝ったような試合がずっとできる選手になりたいですね。
〈取材:卓球王国〉
五十嵐史弥選手の使用用具
「『自分で打っている』という感覚があるのと、球持ちの良さが気に入っています。中・後陣でも十分に威力が出せるラケットですね」(五十嵐)
「ボールのクセが少し出るし、相手も取りにくいので、試合で勝つうえでは普通のスピン系テンションよりも良いと感じます」(五十嵐)