STIGA NEWS

WTTコンテンダーで
決勝進出の及川瑞基にインタビュー
「間違いなく自信につながった」

2025年08月14日

WTTコンテンダー ブエノスアイレス(アルゼンチン)の男子シングルスで強豪選手を連破し、決勝に進出した及川瑞基。その戦いをインタビューで振り返ってもらった。

●及川選手にとってWTTのシングルスで決勝に進出したのは初めてです。大会全体を振り返って、ご自身の調子はどうでしたか?

及川 実はこの大会の1週間前に約3年ぶりに体調を崩して、5~6日ほど練習ができませんでした。そういった意味では不安はありましたが、いざ試合に入ると感覚も良く、ラケットも振り切れて、思ったよりも体が動きました。

●体調を崩されたとのことでしたが、アルゼンチンに着いてからは大丈夫でしたか?

及川 はい、体調は大丈夫でした。練習はあまりできませんでしたが、会場に着いた時には問題ありませんでした。

●1回戦のブーラッソー(フランス)との試合はギリギリの勝負でしたね。

及川 そうですね、彼はやりづらさもあり、サービスもちょこちょこ変えてくる相手でした。1試合目ということで良い感触ではなかったですが、そこから結構調子が上がってきました。自分は試合の中でいろいろと調整できるタイプなので、それらをしっかりやって、段々と調子が上がっていった感じです。

●2回戦の第2シードの呉晙誠(韓国)との試合がキーマッチになったと思いますが、この試合を振り返ってもらえますか。

及川 呉晙誠選手とは2年くらい前にダブルスで一度やったことがありましたが、シングルスでの対戦は初めてでした。両ハンドはスムーズですが、特別球威があるわけでもなく、嫌だなという感じもあまりありませんでした。

  試合に入ってみるとそのイメージ通りでしたが、1、2ゲーム目の後半で自分に単純なミスが出てしまいました。そこで戦術を替えなければと思い、3ゲーム目から自分のサービ合うけの展開を工夫して、相手もリズムを崩してきたように感じたので、そこからは戦術を徹底して戦いました。

●大会を通じていつもよりも動けているように見えましたが、何か意識されたことはありますか?

及川 いつもは試合前に不安からトレーニングなどをやりすぎてガチガチになってしまうのですが、直前にやりすぎても変わらないということを、今年の中国甲Aリーグに行った時に学びました。アルゼンチンに入ってからも試合前にガツガツやることはせず、心の準備とやるべきことをしっかり整理し、感覚を見直して入るのが良いと気づいたので、焦らずにできました。

●中国甲Aリーグに参戦して学んだ点をもう少し話してもらえますか。

及川 はい。向こうでの中国選手たちは試合前にほとんどアップも練習もしないのに試合でめちゃくちゃ強くて驚きました。それが良いきっかけになり、自分も真似して試合直前にあまり練習をせずにやってみたら7勝2敗と良い結果が出たんです。それで、WTTでもこれを実践してみようと思っていました。
 アルゼンチンでのWTTでは体調を崩したこともありましたが、もし崩さなくてもあまりやり込まないで試してみようと考えていました。

●そうだったんですね。WTTの話に戻りますが、準々決勝、準決勝も比較的簡単に勝ち、調子はどんどん上がっていった感じですか?

及川 はい、調子は上がっていきました。準々決勝のベルテレスマイヤー選手(ドイツ)は今季、ブンデスリーガの板垣さんのチーム(ケーニヒスホーフェン)に入った19歳の若手で、練習も何度かしたことがあります。両ハンドが特別強烈というよりは、そつなくこなすタイプで、サービスも普通というイメージでした。自分の調子が良いこともあり、流れ的にもやりやすい部分があったと思います。

●準決勝のタッカー選手(インド)とは何度目の対戦でしたか?

及川 3回目です。2022年のアメリカと去年のチュニジアで対戦し、どちらも勝っていました。

●10年前の対戦はどちらが勝っていましたか?

及川 0-3で負けました。

●決勝を振り返っていかがでしたか?

及川 1ゲーム目は相手のオーラに少し飲まれて、簡単なミスをしてしまい取られてしまいました。2ゲーム目からは慣れてきて、9-3、10-3とリードしていたのですが、「あと1本が欲しい」と意識しすぎた結果、簡単なミスが止まらず、逆転されてしまいました。10-6でタイムアウトを取ったのですが、そのまま流れを掴まれてしまいました。
 3ゲーム目も出だしは良かったのですが、カルデラノ選手は台上がすごく上手いというイメージで、特にチキータもそうですが、ツッツキが非常に上手いと思っていました。しかし、実際はあまりツッツキをしてこず、ストップを切ったりフリックで対応してきたので、それに自分の意識が遅れてしまいました。ツッツキを待っていたため、最初は良かったのですが、後半になるにつれて体の入りが遅くなり、ダブルストップが台から出たり、先にかけられたりすることが多くなりました。展開を変えようとしましたが、やはり相手の方が上手だったと感じましたし、プレッシャーも感じていました。

●それでも実績のある選手に勝ち上がって決勝まで行ったことで、自信になった部分もありますか?

及川 はい、もちろんです。国際大会の上位に行ったのはスロベニア大会以来、3年ぶりで、その時は3位でした。決勝に進出したのは初めてですし、 第2シードの選手や、最近調子の良いタッカー選手、ベルテレスマイヤー選手に勝てたことはすごく自信になりました。改めて自分の長所や特徴を試合の中でどう生かすかということが見えた大会だったので、間違いなく自信につながりました。

●今回決勝で使用された用具について教えてください。ラバーとラケットのセットを教えていただけますか?

及川 ラバーは『DNAハイブリッドXH』を両面にで使用しています。ラケットは『インスピーラハイブリッドカーボン』です。
 ラケットは大会の1週間前に使い慣れた物から新品に変えました。新しいものにして、自分の手に馴染むようにずっと握っていました。今回、少し重めの92gくらいのラケットに変えたのですが、今までは広い会場だとボールが飛ばないイメージだったのが、ボールがしっかり走ってくれました。ラケットがしっくりきて、ラバーはもともと安定していて、回転もスピードも出せるイメージで、非常に使いやすかったです。

及川選手が使用する『インスピーラハイブリッドカーボン』

 ラバーについては『DNAハイブリッドXH』は癖球も出るというか、それが試合の中でとても生きています。元々、自分自身もきれいなボールを打つタイプではないので、それがすごくハマってきた感じもあります。競った場面で点を取りたいところでラバーがしっかりボールを持っていってくれる感覚を強く感じました。 
 また、重いラケットにしたことで、握った時にずっしりとした安心感があり、握りやすかったです。特に強く打った時に、以前に使っていた軽いものと比べて、ボールがしっかり行ってくれる感覚に差を感じました。ラケットの重さは意外と重要かもしれないと感じています。普段の練習では重めはきついですが、試合では威力を出せるので、試合的には重い方が良いと感じています。

及川選手が使用する『DNAハイブリッドXH』